【2026年版】香港の所得税は日本と何が違う?税率・仕組み・納税方法を比較

香港への駐在や移住を考える際、「香港は日本より税金が安い」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

実際、香港は日本と比べて税率体系がシンプルで、給与にかかる税金の最高税率も低い水準です。また、日本のように給与から毎月所得税が源泉徴収される仕組みではなく、原則として自分で年1回申告し、税金を納めます。

ただし、「香港に住んでいれば海外所得はすべて非課税」「183日以内なら香港の所得税はかからない」と単純に判断できるわけではありません。所得の発生場所や雇用関係、滞在日数、租税協定などによって課税関係は変わります。

この記事では、2026年9月時点の香港税務局(IRD)や国税庁などの公的情報をもとに、香港と日本の税金の仕組み、所得税率、非居住者・駐在員の課税、納税方法などを分かりやすく解説します。

香港に駐在している、または駐在の予定がある方の中には、所得税について頭を悩ませている方も多いでしょう。日本で会社に勤めていれば、給与から所得税が天引きされるため、自身で支払う必要はありません。しかし、香港では制度が異なり給与からの天引きが行われないため、自身で納付手続き『確定申告』をしなければなりません。

本記事では、香港における所得税について解説します。納税の流れや日本との違いについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

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香港の税金の仕組み|「テリトリアル課税」が基本

香港の税制を理解するうえで重要なのが、テリトリアル課税(Territorial Source Principle)です。

これは、原則として「どこに住んでいるか」だけではなく、所得や利益がどこで発生したかを基準に課税する考え方です。

例えば事業所得について、香港では居住者・非居住者を問わず、香港で行われた事業や取引から生じた香港源泉の利益がProfits Tax(事業所得税)の対象となります。反対に、国外源泉の利益については原則として香港のProfits Taxの対象外となります。

ただし、現在は多国籍企業グループの構成事業体が香港で受け取る一定の国外源泉所得について、FSIE(Foreign-sourced Income Exemption:国外源泉所得免税)制度が設けられています。国外源泉の利子・配当・知的財産所得・資産譲渡益などでも、要件によって香港で課税される場合があります。したがって、「香港では海外所得なら何でも非課税」と考えるのは正確ではありません。

給与所得についても、香港で勤務・就業したことから生じる所得はSalaries Tax(給与所得税)の対象となります。

香港の所得税(給与所得税)の税率は2〜17%

香港では、日本の「所得税」に相当する給与に対するを税金Salaries Tax(給与所得税)と呼びます。

給与所得税は主に次の2つの方法で計算し、原則として両者を比較して税額が低くなる方が適用されます。

累進税率で計算する場合

課税所得(Net Chargeable Income)に対して、次の累進税率が適用されます。

課税所得 税率
最初の50,000香港ドル 2%
次の50,000香港ドル 6%
次の50,000香港ドル 10%
次の50,000香港ドル 14%
200,000香港ドルを超える部分 17%

つまり、香港の給与所得税の累進税率は2〜17%です。

標準税率で計算する場合

一方、諸控除前のNet Incomeについては、2024/25課税年度から2段階の標準税率が導入されています。

  • 最初の500万香港ドル:15%
  • 500万香港ドルを超える部分:16%


以前は「香港の所得税は15%が上限」と説明されることが多くありましたが、2024/25課税年度以降は、500万香港ドルを超えるNet Incomeの部分について標準税率16%が適用されるため、「一律15%が上限」という説明は現在では正確ではありません。

ただし、標準税率と累進税率のどちらで計算する場合でも、実際の税額は所得額や各種控除によって異なります。

2026/27年度から香港の基礎控除額も拡大

香港では、給与所得税を計算する際にBasic Allowance(基礎控除)やMarried Person’s Allowance(既婚者控除)などを利用できます。

2026/27課税年度から、主な控除額は次のように引き上げられています。

控除項目 2025/26年度 2026/27年度以降
基礎控除 132,000香港ドル 145,000香港ドル
既婚者控除 264,000香港ドル 290,000香港ドル
ひとり親控除 132,000香港ドル 145,000香港ドル
子ども1人あたりの控除 130,000香港ドル 140,000香港ドル

そのため、単純に年収へ17%を掛けて香港の所得税を計算するわけではありません。実際には所得から認められた控除・免税額などを差し引き、累進税率による税額と標準税率による税額を比較します。

香港の2026年の税制改正については、香港2026税制改正|富裕層優遇拡大の中身と海外資産への影響でも詳しく解説しています。

香港では給与から所得税が源泉徴収されない

日本と香港の大きな違いの一つが、給与所得税の納め方です。

日本の会社員の場合、通常は勤務先が毎月の給与から所得税を源泉徴収し、年末調整などを行います。

一方、香港では原則として日本のようなPAYE(Pay As You Earn)方式を採用しておらず、勤務先が毎月Salaries Taxを給与から差し引いて税務局へ納める仕組みではありません。

勤務先は従業員の給与情報をIRDへ報告しますが、給与所得者本人も原則として年1回、Tax Return – Individuals(BIR60)を提出し、自分に課された税金を納めます。IRDも、通常の給与所得税について「年1回の申告、原則2回の分割納付」という仕組みを採用しています。

そのため、香港で働き始めたばかりの方は、手取り給与が日本より多く感じられることがあります。

しかし、給与から税金が引かれていないからといって税金が発生しないわけではありません。後からまとまった納税が必要になるため、毎月一定額を納税用として確保しておくことが大切です。

香港の給与所得税を申告・納税する流れ

香港の課税年度は、原則として4月1日から翌年3月31日までです。

一般的な給与所得者の場合、おおむね次のような流れになります。

1.勤務先が給与情報をIRDへ申告する

勤務先には、従業員の給与や雇用状況などをIRDへ報告する義務があります。

2025/26課税年度については、IRDがEmployer’s Returnを2026年4月1日に発行しており、原則として発行から1か月以内の提出が求められます。

2.本人がBIR60を提出する

給与所得者本人には「Tax Return – Individuals(BIR60)」が送付されます。

2025/26課税年度については、IRDが2026年5月4日に個人向けTax Returnを発行しました。通常の給与所得者は原則1か月以内、つまり2026年6月4日までの提出が必要で、電子申告の場合は自動的に1か月延長されています。

毎年まったく同じ日程とは限らないため、実際の期限はその年のIRDの案内を確認してください。

香港に住んでいる場合、所得税は納付書を使って自身で納めなければなりません。日本の自営業における確定申告と似ていますが、香港は税務局から送られてくる納付書を使って納税すればいいだけなので、確定申告に比べると手間がかからないのもメリットです。

日本と香港では、所得税の納め方以外にも、就業初年度の対応や基礎控除額などに違いがあります。香港の税制をあらかじめ把握しておけば、駐在をしはじめてから対応に追われることなく、落ち着いて引っ越しや移住の手続きができるでしょう。

3.初年度でも「申告しなくてよい」とは限らない

香港で働き始めた初年度について、「1年目は税金を払わなくてよい」「最初の年は申告不要」と理解されることがありますが、正確ではありません。

課税対象になるにもかかわらずTax Returnを受け取っていない場合、納税者は原則として対象となる課税年度の終了後4か月以内にIRDへ課税対象であることを通知する必要があります。給与所得税の場合、通常は7月31日までが目安となります。

「IRDから書類が届かなかったから申告しなくてよい」と判断しないよう注意しましょう。

4.税額通知を受け取り、納税する

申告内容をもとにIRDが税額を計算すると、Tax Demand Note(納税通知)が発行されます。

香港ではProvisional Salaries Tax(予定給与所得税)という仕組みがあり、前年度などの所得をもとに次年度分の予定税額も計算されます。すでに支払った予定税額は、翌年度の確定税額に充当されます。

通常は税額通知に第1期・第2期の納期限と金額が記載され、2回に分けて支払う形になります。

所得が大幅に減る見込みがある場合など、一定の条件を満たせば予定税額の全部または一部について支払猶予を申請できる場合があります。

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香港の税金はさまざまな方法で支払える

2026年9月時点では、IRDへの税金の支払いには複数の方法があります。

例えば、次のような方法が利用できます。

  • FPS(Faster Payment System)
  • PPS
  • インターネットバンキング
  • 銀行ATM
  • e-Cheque
  • 郵送
  • 窓口
  • 対応するコンビニエンスストア

などが利用できます。

以前より電子決済の選択肢が増えているため、実際の支払方法や利用上限については、納税時にIRDの最新情報を確認するとよいでしょう。

香港の非居住者・駐在員にも所得税がかかる場合がある

香港では、税務上の居住者か非居住者かだけで課税の有無が決まるわけではありません。

香港税務局は、香港源泉の給与所得、賃貸所得、事業利益がある場合、香港居住者であるかどうかにかかわらず香港で課税される可能性があると説明しています。

そのため、

「日本の非居住者になったから香港でも非課税」

「香港に年間183日住んでいないから香港の税金はかからない」

と単純には判断できません。

駐在員の場合も、雇用契約の所在地、給与の負担者、実際にどこで勤務したか、香港での滞在日数などを確認する必要があります。

「60日ルール」と「183日ルール」は別の制度

香港の個人所得税を調べていると、「60日」「183日」という2つの日数を目にすることがあります。

この2つは意味が異なるため、混同しないことが重要です。

香港国内法の「60日ルール」

香港の国内税法には、一定のケースで、課税年度中に香港を訪問して勤務した日数が合計60日以内であれば、Salaries Taxが免除される仕組みがあります。

例えば香港勤務に該当する場合でも、香港でサービスを提供したのが訪問中の合計60日以内であるなど、一定の条件を満たせば免税となる可能性があります。

ただし、雇用形態などによって取り扱いが異なるため、「年間60日以内なら誰でも非課税」という制度ではありません。

日港租税協定の「183日ルール」

一方、「183日ルール」は日港租税協定に関係する短期滞在者の給与所得の取り扱いです。

日本と香港の間では二重課税を防ぐための租税協定が発効しており、一定の要件を満たす場合、連続する12か月のうち香港での滞在が183日以内であれば、香港の給与所得税が免除される場合があります。

ただし、183日以下であることだけが条件ではありません。給与を誰が支払っているか、現地の恒久的施設などが給与を負担しているかといった要件も関係します。

したがって、「183日以内=自動的に香港の所得税がゼロ」ではありません。

また、日本の所得税法上の居住者・非居住者の判定も「183日」を基準にしているわけではありません。日本では、国内に住所がある、または引き続き1年以上居所があるかどうかなどによって居住者・非居住者を判断します。

香港から本帰国する場合は「Tax Clearance」に注意

通常の香港給与所得税には日本のような毎月の源泉徴収制度はありませんが、香港を長期間離れる場合には例外的な手続きがあります。

Salaries Taxの対象となる従業員が香港を長期間離れる場合、原則として勤務先は出国予定日の少なくとも1か月前までにIRDへIR56Gを提出します。

また、勤務先はIR56Gを提出してから1か月間、またはIRDからLetter of Releaseが発行されるまでのいずれか早い時点まで、給与・賞与など従業員に支払う金銭を留保する必要があります。

香港駐在を終えて日本へ戻る予定がある方は、税金だけでなく銀行口座やMPF、海外資産、保険なども含めて早めに整理しておくことをおすすめします。

本帰国時の手続きについては、【2026】香港撤退・本帰国マニュアル|銀行口座・税金・MPF・送金・保険のお金チェックリストもあわせてご覧ください。

香港と日本の税金を比較【2026年9月時点】

香港と日本の代表的な税金を比較すると、次のようになります。

税金 香港 日本
個人の給与所得に対する税率 累進税率2〜17%
または標準税率:最初の500万HKDまで15%、超過部分16%の税額と比較
所得税5〜45%の累進税率。
別途、復興特別所得税や個人住民税など
法人所得への主な税率 課税利益200万HKDまで8.25%
超過部分16.5%
国税の法人税率は原則23.2%
地方税等が別途かかる
消費税・VAT 一般的な消費税・VATなし 標準税率10%
軽減税率8%
キャピタルゲイン 資本性の譲渡益は原則Profits Taxの対象外。
ただし、取引性の利益やFSIE制度など例外あり
原則として資産の種類に応じて課税。
株式等の譲渡益は原則20%+復興特別所得税

香港の給与所得税については香港税務局・JETRO、日本の所得税は国税庁の公表情報に基づいています。日本の所得税率は5〜45%の7段階で、2037年までは原則として所得税額に対して2.1%の復興特別所得税も課されます。

法人税について、香港法人は課税利益200万香港ドルまで8.25%、それを超える部分は16.5%です。日本の普通法人に対するの国税の法人税率は原則23.2%で、資本金1億円以下など一定の法人については年800万円以下の所得に15%の軽減税率が適用される場合があります。さらに、日本では地方税等もあるため、単純に法人税率だけで実際の税負担を比較することはできません。

なお、日本では2026年4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から500万円を控除した課税標準に4%を課す防衛特別法人税も導入されています。

消費課税については、香港には日本の消費税に相当する一般的なVAT・GSTはありません。一方、日本の消費税は標準10%、一定の飲食料品などについて軽減税率8%です。

香港ではキャピタルゲインに税金がかからない?

香港には一般的な「キャピタルゲイン税」はありません。

株式などの資産を売却して得た利益が資本性(capital nature)の利益と判断される場合、原則としてProfits Taxの対象になりません。

ただし、「売買益なら何でも非課税」というわけではありません。

頻繁な売買や取引目的での取得など、事実関係から利益が事業・取引による収益性の利益(revenue nature)と判断されれば、Profits Taxの対象となる可能性があります。

また、多国籍企業グループの構成事業体が受け取る国外源泉の資産譲渡益については、FSIE制度の対象となる場合があります。

一方、日本ではキャピタルゲインも原則として課税対象ですが、税率や所得区分は資産によって異なります。

例えば株式等の譲渡益は原則として所得税15%・住民税5%の申告分離課税となり、2037年までは所得税部分に復興特別所得税が加わるため、一般的には合計20.315%となります。

土地・建物などは所有期間などによって異なる税率が適用されるため、「日本のキャピタルゲイン税は一律20.315%」というわけではありません。

日本の所得税も2026年に改正

香港との税金比較では、日本側の制度変更にも注意が必要です。

2026年9月時点では、日本の所得税の基本的な累進税率は5〜45%です。一方、令和8年度税制改正によって、基礎控除や給与所得控除などが見直されています。

主な変更点として、次のようなものがあります。

  • 基礎控除の本則部分を58万円から62万円へ引き上げ
  • 給与所得控除の最低保障額を65万円から69万円へ引き上げ
  • 扶養親族等の所得要件を見直し

などが実施されます。基礎控除については合計所得金額や特例によって実際の控除額が異なります。

これらは原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。2026年11月までの通常の源泉徴収事務には変更がなく、2026年12月の年末調整などから影響する点にも注意が必要です。

このように、「香港と日本の税金を比較する」ときは、古い日本の基礎控除額や制度を前提にしないことも重要です。

「香港は日本より税金が安い」は本当?

所得税率だけを見ると、香港は日本より低い水準に見えます。

香港の給与所得税は累進税率で最大17%であるのに対し、日本の所得税は最大45%です。また香港には一般的な消費税・VATがなく、資本性のキャピタルゲインも原則として課税されません。

その意味では、香港は税率が比較的低く、税制もシンプルな地域といえます。

ただし、「香港で運用している資産だから日本でも非課税」という意味ではありません。

例えば香港駐在を終えて日本へ帰国し、日本の税務上の居住者となった場合、海外の金融資産や保険から生じる所得についても日本での課税関係を確認する必要があります。

特に、資産の売却や保険金の受け取りなどは、「どの国に住んでいるときに受け取るか」「どのような所得に分類されるか」によって税務上の取り扱いが変わる可能性があります。

海外保険を日本居住中に受け取る場合の税務については、海外保険の満期保険金を受け取ったら税金は?確定申告・一時所得・為替差益を解説も参考にしてください。

まとめ|香港と日本では「税率」だけでなく課税の仕組みが違う

香港と日本の税金には、税率だけでなく課税方法そのものに大きな違いがあります。

香港の税制を理解するうえで、特に押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • 香港はテリトリアル課税を基本としており、所得・利益の源泉地が重要
  • 給与所得税は累進税率2〜17%、または標準税率15%・16%による税額と比較して計算される
  • 「香港の所得税は15%が上限」という説明は2024/25課税年度以降、そのままでは正確ではない
  • 日本のような毎月の給与からの源泉徴収は原則なく、本人が年1回申告する
  • Provisional Salaries Taxがあるため、初年度の後にまとまった納税が発生することがある
  • 非居住者でも香港源泉の所得があれば課税される可能性がある
  • 香港国内法の「60日ルール」と、日港租税協定の「183日ルール」は別のもの
  • 香港には一般的な消費税・VATやキャピタルゲイン税はないが、例外もある
  • 日本側でも2026年に基礎控除・給与所得控除などの税制改正が行われている


税金は、単純な税率比較だけでは判断できません。特に海外駐在・移住・本帰国・海外資産運用では、税務上どの国の居住者なのか、どこで所得が発生したのか、いつ資産を売却・受け取るのかによって課税関係が変わります。

香港と日本をまたいで資産を保有している方は、帰国や資産の受け取りが決まってから考えるのではなく、事前に税務上の取り扱いを確認しておくことが大切です。

※本記事は2026年9月時点で確認できる香港税務局(IRD)、JETRO、国税庁、財務省などの公的情報をもとに、一般的な税制について解説したものです。実際の税務上の取り扱いは、居住地、滞在日数、雇用関係、所得の源泉、資産の種類などによって異なります。具体的な申告や税額については、各国・地域の税務当局または税理士などの専門家へご確認ください。

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