記事監修:Insurance110 シニア資産コンサルタント
才田 弘一郎(さいた・こういちろう)
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。
香港は15年以上連続で「世界で最も住宅が高い都市」に選ばれている国際金融都市です。2024年2月の税制改正でBSD(買家印紙税)・NRSD(新住宅印紙税)・SSD(特別印紙税)が全面廃止され、外国人投資家にとっての参入障壁が大幅に下がりました。本記事では、香港不動産の購入手順からエリア別の価格、投資リスク、そして保険やREITとの比較まで、現地FPの視点で徹底解説します。
この記事でわかること
- 2024年BSD全面廃止後の税制と、外国人が香港不動産を購入する具体的な手順
- エリア別の価格帯・利回り目安と、投資対象としてのメリット・リスク
- 不動産・REIT・貯蓄型保険を組み合わせた在住日本人向けポートフォリオ設計
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香港不動産市場の現状【2026年最新】
なぜ香港の不動産は世界一高いのか
香港の不動産価格が世界トップクラスである背景には、構造的な要因があります。まず、香港の総面積は約1,110平方キロメートルですが、山岳地帯が多く、実際に開発可能な土地はわずか25%程度に限られます。約750万人の人口がこの限られた平地に集中するため、供給制約が慢性的に続いています。
さらに、香港政府の歳入の約20〜30%を土地売却収入(Land Premium)が占めており、高い地価を維持することが財政構造に組み込まれています。加えて、国際金融センターとしてグローバルマネーが流入しやすい環境、キャピタルゲイン税・相続税がゼロという税制上の魅力が、投資需要を底堅くしています。
こうした供給制約と旺盛な需要の構造が重なり、一般的なマンション(40〜50平方メートル)でも5,000万〜1億円規模の価格帯が「当たり前」となっているのです。
2021年ピークからの価格推移と今後の見通し
香港の住宅価格指数(Rating and Valuation Department公表)は2021年9月にピークを記録しました。その後、米国の利上げに連動した香港金利の上昇、中国本土経済の減速、そして人口流出の影響により、2024年末までにピーク比で約25〜28%の下落を経験しています。
2025年後半からは下落幅が縮小し、底打ちの兆しが見え始めました。2024年2月のBSD全面廃止による取引活性化、米FRBの利下げサイクル開始に伴う住宅ローン金利の低下、そして中国本土からの資金流入の回復が下支え要因となっています。
2026年以降の見通しとしては、急激な価格回復は見込みにくいものの、金利低下と税制緩和の恩恵が浸透するにつれ、緩やかな回復基調に入ると見る市場参加者が多い状況です。投資タイミングとしては、ピーク時より大幅に割安な水準で参入できる好機と捉えることもできます。
2024年税制改正(BSD全面廃止)のインパクト
2024年2月28日の財政予算案で、香港政府は不動産取引にかかる3つの追加印紙税を全面廃止しました。これは香港不動産市場における過去10年で最大級の規制緩和です。
| 税目 | 改正前(2024年1月まで) | 改正後(2024年2月28日〜) |
|---|---|---|
| BSD(買家印紙税) | 非香港永住者:物件価格の7.5% | 廃止(0%) |
| NRSD(新住宅印紙税) | 2軒目以降の購入者:物件価格の7.5% | 廃止(0%) |
| SSD(特別印紙税) | 購入後2年以内の転売:10〜20% | 廃止(0%) |
| AVD(通常印紙税) | 物件価格の1.5%〜4.25%(累進税率) | 据え置き 0.75%〜4.25% (※住宅用の第2スケール適用) |
改正前は、日本人(非永住者)が香港で不動産を購入する場合、BSDの7.5%に加えてAVDが課され、実質15%前後の印紙税がかかっていました。改正後はAVDの0.75〜4.25%のみで済むため、例えば1,000万HKD(約1.9億円)の物件であれば、印紙税だけで約100万HKD(約1,900万円)以上のコスト削減になります。
この改正により、外国人投資家にとって香港不動産は格段にアクセスしやすくなりました。
香港で不動産を購入する方法
外国人・日本人の購入規制
香港では、外国人による不動産購入に対する法的な制限は基本的にありません。日本国籍者であっても、香港居住者でなくても、住宅・商業用不動産を自由に購入できます。これは東南アジア諸国(タイやベトナムなど)と比べて大きなアドバンテージです。
2024年2月のBSD廃止以前は、非永住者に対して7.5%のBSDが課されていたため、事実上の「外国人プレミアム」が存在しました。しかし現在はこの追加コストがゼロとなり、香港永住者と同じ条件で購入できます。
ただし、住宅ローンの審査基準は香港居住者と非居住者で異なります(後述)。また、法人名義での購入も可能ですが、法人設立コストや管理費用を考慮する必要があります。
土地制度(リースホールド)の仕組み
香港の不動産で最も重要な特徴の一つが、土地所有権の仕組みです。香港では原則としてすべての土地は政府が所有しており、民間に付与されるのは「リースホールド(借地権)」です。一般的なリース期間は50年で、期限到来時に更新可能とされています。
1997年の返還以降に付与されたリースは、2047年6月30日以降も更新可能とされていますが、更新条件の詳細は将来の政府方針に依存する部分があります。投資判断の際は、リース残存年数を必ず確認してください。残存年数が短い物件は資産価値に影響を及ぼす可能性があります。
なお、中環(セントラル)の聖ヨハネ大聖堂の敷地が唯一のフリーホールド(完全所有権)とされており、それ以外はすべてリースホールドです。
購入手順(デポジット→契約→引渡し)
香港での不動産購入は、以下の手順で進みます。
- ステップ1:物件選定と仮契約(Provisional Agreement)
物件を決定したら、売主との間で仮契約を締結します。この時点で物件価格の3〜5%をデポジット(仮手付金)として支払います。仮契約締結後、通常14日以内に正式契約に進む必要があります。 - ステップ2:正式契約(Formal Agreement)と印紙税納付
弁護士(Solicitor)を通じて正式契約を締結します。デポジットの残額(通常、物件価格の10%から仮手付金を差し引いた額)を支払い、AVD(印紙税)を30日以内に納付します。 - ステップ3:残金決済と引渡し(Completion)
正式契約から通常60〜90日後に残金を決済し、物件の引渡しを受けます。住宅ローンを利用する場合は、この時点までに融資実行の手続きを完了させます。
全プロセスを通じて、香港の弁護士への依頼が必須です。弁護士費用は物件価格や案件の複雑さにより異なりますが、一般的に15,000〜50,000HKD程度です。
購入コスト一覧
香港で不動産を購入する際にかかる主な費用は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| AVD(通常印紙税) | 物件価格の0.75〜4.25% | 2024年2月以降、住宅用は第2スケール適用 |
| 弁護士費用 | 15,000〜50,000 HKD | 売買契約・登記手続き |
| 不動産エージェント手数料 | 物件価格の1% | 買主側(通常) |
| 住宅ローン関連費用 | 数千〜数万HKD | 銀行手数料・鑑定費用 |
| 管理費(月額) | 2,000〜10,000 HKD | 物件の築年数・グレードにより異なる |
| 固定資産税(Rates) | 課税評価額の5% | 四半期ごとに支払い |
| 地代(Government Rent) | 課税評価額の3% | 新界エリアおよび1985年以降のリース |
1,000万HKD(約1.9億円)の物件を購入する場合、初期費用としてAVD(約37.5万HKD)+弁護士費用+エージェント手数料で、合計約55〜60万HKD(約1,000〜1,150万円)が目安となります。
エリア別の特徴と価格帯
香港の不動産市場は、エリアによって特徴と価格帯が大きく異なります。以下は2026年時点の住宅価格の目安です。
| エリア | 平均価格(1平方フィートあたり) | 50㎡マンション目安 | 賃貸利回り(グロス) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 香港島セントラル〜ミッドレベル | 25,000〜40,000 HKD | 1.3億〜2.1億HKD | 2.0〜2.5% | 金融街・駐在員需要が最も強い |
| 香港島サウスサイド | 18,000〜28,000 HKD | 9,700万〜1.5億HKD | 2.0〜2.5% | 海沿いの高級住宅街・静かな環境 |
| 九龍 尖沙咀〜九龍站 | 20,000〜32,000 HKD | 1.1億〜1.7億HKD | 2.3〜2.8% | 商業地区・交通利便性が高い |
| 九龍 旺角〜深水埗 | 12,000〜18,000 HKD | 6,500万〜9,700万HKD | 2.5〜3.0% | 庶民的エリア・投資入門に適している |
| 新界 沙田・荃灣 | 10,000〜16,000 HKD | 5,400万〜8,600万HKD | 2.8〜3.5% | ファミリー層・MTR沿線が人気 |
| 新界 元朗・天水圍 | 8,000〜12,000 HKD | 4,300万〜6,500万HKD | 3.0〜3.8% | 最も手頃・深圳への近接性 |
※1 HKD = 約19円で換算。価格は築年数・階層・方角により大きく変動します。
香港島(セントラル・ミッドレベル・サウスサイド)
香港島は香港不動産市場の頂点に位置するエリアです。特にセントラルからミッドレベルにかけては、世界的な金融機関の本社が集積し、駐在員向けの高級賃貸需要が根強く存在します。ザ・ピーク周辺は超高級住宅地として知られ、一戸あたり数億HKDの取引も珍しくありません。
投資対象としては、賃貸利回りは低めですが、キャピタルゲイン狙いの長期保有に適しています。サウスサイド(レパルスベイ、スタンレー周辺)は海沿いの閑静な住宅地で、家族連れの駐在員に人気があります。
九龍(尖沙咀・九龍站)
九龍半島は香港島と比べてやや手頃な価格帯ですが、近年の大型再開発プロジェクトにより急速に高級化が進んでいます。特に九龍站(カオルーンステーション)周辺のICC(環球貿易広場)エリアは、ウォーターフロントの高層マンション群が立ち並び、ハーバービューの物件は香港島の物件に劣らない価格で取引されます。
尖沙咀は商業・観光エリアとしての賃貸需要が安定しており、中長期の投資対象として検討に値します。旺角から深水埗にかけては比較的手頃な価格帯のため、初めて香港不動産に投資する方のエントリーポイントとしても注目されています。
新界(沙田・荃灣・元朗)
新界は香港の面積の約86%を占める広大なエリアで、MTR(地下鉄)沿線を中心に大規模な住宅開発が進んでいます。香港島や九龍と比べて価格が手頃で、投資利回りも相対的に高い傾向があります。
沙田や荃灣はMTRの利便性が高く、ファミリー層に人気があるため賃貸需要が安定しています。元朗や天水圍は深圳との境界に近く、グレーターベイエリア(粤港澳大湾区)構想の進展に伴う発展が期待されるエリアです。ただし、中心部からの距離があるため、入居者層が限られる点には注意が必要です。
香港不動産投資のメリットとリスク
メリット ― キャピタルゲイン税ゼロ・賃貸需要・通貨安定
香港で不動産を保有する最大のメリットは、税制面の優位性です。
キャピタルゲイン税がゼロ: 香港では不動産の売却益に対する課税がありません。長期保有で値上がりした物件を売却しても、香港側での課税は発生しません(日本居住者の場合、日本での課税は別途発生します)。
相続税がゼロ: 2006年に相続税が廃止されており、不動産を含む資産の世代間移転にかかる税負担がありません。
安定した賃貸需要: 国際金融センターとして世界中から人材が集まるため、特にミッドレベルや九龍站周辺では駐在員向けの高級賃貸需要が底堅く推移しています。
通貨ペッグ制度: 香港ドルは米ドルとのペッグ制(1USD=7.75〜7.85HKD)を維持しており、通貨の安定性が高いことも国際投資家にとっての安心材料です。
リスク ― 米金利連動・政治リスク・流動性
一方で、香港不動産投資には以下のリスクを認識しておく必要があります。
米金利への連動: 通貨ペッグの関係上、香港の金利政策は米FRBの動向に追随します。米国が利上げすると香港の住宅ローン金利も上昇し、不動産価格の下押し圧力となります。2022〜2024年の価格調整はまさにこの要因によるものでした。
政治・制度リスク: 2020年以降の国家安全維持法の施行、そして2047年の「一国二制度」期限に向けた不透明性は、長期的な投資判断において考慮すべき要素です。
流動性リスク: 高額な物件ほど買い手が限定され、市況が悪化した局面では売却に時間がかかる場合があります。特に新界の一部エリアや築古物件は流動性が低くなりがちです。
為替リスク(日本円ベース): HKDは米ドルにペッグされていますが、円安・円高により日本円換算での資産価値は変動します。
住宅ローンの制約(非居住者のLTV上限50-60%)
香港で住宅ローン(Mortgage)を利用する場合、香港金融管理局(HKMA)のガイドラインに基づくLTV(Loan to Value)規制に注意が必要です。
香港居住者の場合、自己居住用の1軒目であればLTV上限は70〜80%(物件価格により異なる)ですが、非居住者(海外在住の投資家)の場合はLTV上限が10〜20%引き下げられ、50〜60%程度が目安となります。
つまり、1,000万HKDの物件を購入する場合、非居住者は少なくとも400〜500万HKD(約7,600万〜9,500万円)の頭金が必要になるということです。住宅ローン金利は2026年時点でHIBOR+1.3%前後(実効金利4.0〜4.5%程度)が一般的で、米国の利下げサイクルに伴い今後の低下が見込まれています。
不動産だけじゃない|香港で資産を持つ3つの方法
香港で資産形成を考える際、不動産の直接購入だけが選択肢ではありません。特に数億円規模の初期投資が難しい場合、REITや貯蓄型保険を組み合わせることで、香港市場の恩恵を幅広く享受できます。
直接購入 vs 香港上場REIT vs 貯蓄型保険
| 比較項目 | 不動産直接購入 | 香港上場REIT | 貯蓄型保険(ホールライフ) |
|---|---|---|---|
| 最低投資額 | 数千万〜数億HKD | 数千HKD〜 | 年額数千〜数万USD |
| 流動性 | 低い(売却に数カ月) | 高い(市場で即日売買) | 中程度(最短2年後から引き出し可) |
| 利回り目安 | グロス2〜4%(+キャピタルゲイン) | 配当5〜8% | 年4〜6%(長期複利) |
| 管理の手間 | 大(修繕・テナント管理) | 不要 | 不要 |
| レバレッジ | 可能(ローン利用) | 不可(信用取引除く) | プランにより可 |
| 税制メリット | キャピタルゲイン税ゼロ | 配当税ゼロ | 香港側では運用益非課税(※日本での課税は別途確認が必要) |
| リスク分散 | 単一物件集中 | 複数物件に分散 | 保険会社の運用に委託(世界へ分散) |
香港上場REITとしては、Link REIT(旧・領展房地産投資信託基金)が最大手で、商業施設やオフィスを保有する分散型ファンドです。個人投資家でも少額から不動産市場へのエクスポージャーを得られるのが大きなメリットです。
在住日本人のモデルポートフォリオ
香港在住の日本人が中長期的な資産形成を行う場合、不動産・REIT・保険を組み合わせた分散ポートフォリオを検討する価値があります。以下は資産規模別のモデル例です。
パターンA:資産5,000万円規模(資産形成初期)
- 貯蓄型保険(USD建て):60%
- 香港上場REIT:30%
- 現金・短期債券:10%
パターンB:資産1〜2億円規模(資産形成中期)
- 不動産直接購入(新界エリア):40%
- 貯蓄型保険(USD建て):30%
- 香港上場REIT:20%
- 現金・短期債券:10%
パターンC:資産3億円以上(資産保全期)
- 不動産直接購入(香港島or九龍):50%
- 貯蓄型保険(USD建て):25%
- 香港上場REIT:15%
- 現金・短期債券:10%
いずれのパターンでも重要なのは、日本帰国時の「出口戦略」をあらかじめ設計しておくことです。保有資産の種類によって、帰国後の税務処理や売却タイミングが大きく異なります。
日本の税務・確定申告で知っておくべきこと
香港不動産投資で見落としがちなのが、日本側での税務です。香港にはキャピタルゲイン税も相続税もありませんが、日本の税法は「全世界所得課税」の原則をとるため、日本居住者は海外の所得・資産にも日本で課税されます。
日本居住者が香港不動産を保有する場合
日本に居住しながら香港不動産を保有する場合、以下の税務上の義務が生じます。
賃貸所得: 香港で得た賃料収入は、日本の所得税の確定申告において「不動産所得」として申告が必要です。香港で物業税(Property Tax)を支払っている場合は、日本の確定申告で外国税額控除を適用できます。
売却益: 香港の不動産を売却して利益が出た場合、日本では「譲渡所得」として課税されます。保有期間5年以下の場合は短期譲渡所得(約39%)、5年超の場合は長期譲渡所得(約20%)が適用されます。
国外財産調書: 年末時点で5,000万円超の国外財産を保有する場合、「国外財産調書」の提出が義務付けられています。未提出や虚偽記載には罰則があるため、必ず対応してください。
非居住者(香港居住)の場合
日本の非居住者として香港に居住している期間中は、日本国内源泉所得のみが日本で課税対象となります。香港不動産からの賃貸収入や売却益は、日本での課税対象にはなりません。
ただし、日本へ帰国して居住者に戻った場合、その時点から全世界所得課税の対象となります。帰国前に含み益のある不動産を売却するか、帰国後に売却するかで税負担が大きく変わるため、帰国の計画がある方は早めにシミュレーションしておくことを強くおすすめします。
また、「5年ルール」にも注意が必要です。過去10年以内に日本に住所を有していた期間が5年超の場合、出国時に一定の金融資産に対して「出国税(国外転出時課税)」が適用される場合がありますが、不動産そのものは出国税の対象外です。
CRS(共通報告基準)と情報交換
2018年から日本と香港の間でCRS(Common Reporting Standard)に基づく金融口座情報の自動交換が実施されています。香港の銀行口座や証券口座の残高・利子・配当等の情報は、日本の税務当局に自動的に共有されます。
不動産そのものはCRSの直接的な報告対象ではありませんが、不動産売却代金が銀行口座に入金されればその情報は共有される可能性があります。「海外なので申告しなくてもわからない」という時代は終わっていますので、適切な申告を行うことが重要です。
出口戦略 ― 売却・相続・送金
不動産投資において「買い方」と同じくらい重要なのが「出口戦略」です。香港不動産の場合、売却・相続・送金それぞれに特有の注意点があります。
売却手続きと日本への送金
香港で不動産を売却する場合、通常は不動産エージェントに売却を依頼し、買い手が見つかったら弁護士を通じて売買契約を締結します。売却代金の受領から日本の銀行口座への送金までの一般的な流れは以下の通りです。
- 売買契約締結・デポジット受領
- 残金決済・物件引渡し
- 住宅ローン残債の清算(ある場合)
- 香港の銀行口座に売却代金を入金
- 送金先銀行の事前確認(マネーロンダリング対策のため、送金目的や資金源の証明が求められる場合あり)
- 日本の銀行口座へ海外送金
日本への送金時に注意すべきは、100万円超の海外送金については、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」が提出される点です。売却益の申告漏れがないよう、確定申告の準備を並行して進めてください。
相続時の注意点(プロベートとの関係)
香港で不動産を保有したまま所有者が亡くなった場合、香港のプロベート(遺産検認)手続きが必要になります。プロベートとは、裁判所が遺言書の有効性を確認し、遺産管理人(Administrator / Executor)を任命する法的手続きです。
香港のプロベートは手続きが煩雑で、通常6カ月〜1年以上かかります。この期間中、不動産の売却や名義変更はできません。さらに、日本の相続手続きと香港のプロベートを並行して進める必要があるため、両国の法律に詳しい専門家のサポートが不可欠です。
対策としては、以下の方法が考えられます。
- 香港で有効な遺言書を別途作成しておく(日本の遺言書だけでは香港のプロベート手続きに時間がかかる場合がある)
- 法人名義で保有する(法人の株式移転で実質的な不動産移転が可能)
- 生前に計画的に売却・資産移転を行う
まとめ ― 香港不動産投資は誰に向いているのか
2024年2月のBSD全面廃止により、香港不動産は外国人投資家にとってかつてないほどアクセスしやすくなりました。キャピタルゲイン税ゼロ・相続税ゼロという世界でもまれな税制環境に加え、2021年のピークから25%以上下落した現在の価格水準は、中長期的な投資タイミングとして検討に値します。
ただし、数千万〜数億円規模の初期投資が必要であること、住宅ローンのLTV制約が厳しいこと、そして2047年以降の制度的不確実性を踏まえると、香港不動産の直接購入は「ポートフォリオの一部」として位置づけるのが適切です。
資産規模や投資目的に応じて、不動産の直接購入・上場REIT・貯蓄型保険を組み合わせ、出口戦略まで見据えた設計を行うことが、香港での資産運用を成功に導く鍵となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本人でも香港の不動産は買えますか?
はい、香港では外国人による不動産購入の法的制限はありません。2024年2月のBSD廃止以降、非永住者に対する追加印紙税もなくなったため、香港永住者と同じ条件で購入できます。ただし、住宅ローンのLTV上限が50〜60%と低く設定される点にはご注意ください。
Q2. 最低いくらあれば香港の不動産に投資できますか?
直接購入の場合、新界エリアの小型物件(300〜400万HKD=約5,700万〜7,600万円)が現実的なエントリーポイントです。頭金40〜50%+諸費用で、最低でも2,500万〜4,000万円程度の自己資金が必要です。少額から始めたい場合は、香港上場REIT(数万円から購入可能)や貯蓄型保険(年額数十万円から)を検討されるとよいでしょう。
Q3. 賃貸利回りはどのくらいですか?
エリアと物件タイプにより異なりますが、グロス利回りで2.0〜3.8%が一般的です。香港島の高級物件は2.0〜2.5%、新界エリアは3.0〜3.8%が目安です。東京都心と比較するとやや低めですが、キャピタルゲイン税ゼロ・相続税ゼロという税制メリットを考慮すると、実質的なリターンは見た目以上になる場合があります。
Q4. 購入後の管理はどうすればよいですか?
香港には不動産管理会社(Property Management Company)が多数あり、テナント募集・賃料回収・修繕対応などを一括で委託できます。管理手数料は賃料の5〜8%が一般的です。遠隔地から投資する場合は、信頼できる管理会社の選定が重要です。
Q5. 2047年問題は投資に影響しますか?
「一国二制度」の期限である2047年以降の制度的不確実性は、長期投資において考慮すべき要素です。ただし、現時点で香港政府は2047年以降もリースの更新を継続する方針を示しており、不動産市場への直接的な影響は限定的との見方が主流です。とはいえ、20年以上先の政策を確定的に予測することは困難ですので、分散投資の観点からポートフォリオの一部として位置づけるのが賢明です。
Q6. 香港不動産ファンドに投資する方法はありますか?
香港証券取引所に上場しているREITのほか、非上場の不動産私募ファンド(Private Real Estate Fund)も存在します。非上場ファンドは最低投資額が100万USD以上のものが多く、プロフェッショナル投資家向けです。一般的な個人投資家には上場REITが最もアクセスしやすい選択肢です。
※本記事は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の不動産物件の売買や金融商品の購入・勧誘を目的としたものではありません。不動産投資にはリスクが伴い、元本の保証はありません。投資判断は、ご自身の財務状況やリスク許容度を踏まえた上で、税理士・弁護士等の専門家にご相談の上、自己責任で行ってください。
本記事に記載された税制・法制度・価格等の情報は2026年3月時点のものであり、今後変更される可能性があります。
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