法人のお客様で、リスクの多い香港ビジネスを成功へ導くための“転ばぬ先の杖”として最適化された保険手配が重要となります。
飲食店、コンサルタント、輸出入ビジネス、フォワーダー、不動産etc…
様々な業種・業態で香港進出を目指している、もしくは既に進出している企業様もいらっしゃることでしょうが、コストを除けば非常にビジネスの展開を進めやすい環境です。
しかし『国が変わればルールが変わる』これを肝に銘じる必要があります。釈迦に説法となりますがビジネス上のリスクを想定することが出来なければ、近い将来、香港撤退という残念な結果を迎えることも・・・。
海外ビジネス生き残り戦略として最低限の役割を担う保険をご検討であれば、まずはどのような保険が必要となるのか?
必ず知っておかないといけない基礎知識として以下を押えておきましょう。
はじめに:法人保険とは?
法人保険と一言で言っても、大きく分けると以下の3カテゴリーに分類できます。
どのような役割・リスクを回避するための保険に加入しているのか?
第三者目線で定期的な保険内容の確認・見直し提案を依頼するのも海外では必要でしょう。
会社の健康診断のようなものですね。
- ①法律上の強制保険(労災保険、MPF)
- ②財務戦略上の保険(経営者の保障、退職金の準備、法人税対策、緊急予備資金確保など)
- ③経営戦略上の保険(役員候補向け福利厚生、マリーン、D&O、個人情報漏洩保険など)
以下、ちょっと詳しく解説していきます。
① 法律上の強制保険
(香港でビジネスを行う際に未加入であれば罰則となります)
香港でビジネス展開をする上で必ず加入が必要な『強制保険』が以下の2つになります。
労災保険(強制保険)
『労災保険』… 日本でもお馴染みの保険ではありますが、細かい部分で日本との違いがあります。
場合によっては労災保険でカバーできない状況もありますので、ご注意下さい。
また、日本国内で労災申請をするということは少なからず社会的信用が欠如している会社と認識されてしまう可能性があり、労災申請せずに労働者と対応している企業もあるかもしれません。
ですが、香港では飲食店などで頻繁に労災事故が発生し、従業員側から訴訟をおこされるなど、本業とは別のマネジメント負担が起こります。
労災申請した従業員へ、労災休暇中の給与保証などビジネスの根幹に関わる部分のリスクは必ずヘッジする必要があります。
MPF(強制保険)(Mandatory Provident Fund)
『MPF(Mandatory Provident Fund)』… 日本で言うところの厚生年金です。
会社と従業員がそれぞれ給与額の5%ずつを負担することで、従業員の将来の生活資金などを積み立てる制度です。
日本人駐在員であれば、加入義務に該当しない可能性もありますが、もし加入義務がある人の積立が行われていない場合は“有罪”となりますので、安易に判断しないようにしっかりと確認をしましょう。
② 財務戦略上の保険
『法人税が安いから有利だ』という話もよく聞く香港ですが、それ以上に掛かるコストは『世界一の家賃』と『人件費』、この費用を負担しても順調な経営をされている法人様もいらっしゃいますが『撤退』という道を選択せざるを得ない法人様もあります。
財務を強化するための手段として日本でもよく活用されているのが『法人保険』です。 経営者の信用が企業の信用となっているのは共通ですので社長の保障をしっかり確保する。
また、日本ほど具体的に商品毎の損金区分が決まっているわけではありませんが、 (そもそも節税しなくても低税率ですね)。
それでも突然訪れる資金繰りに対し、日頃から備えをしておくことは大事な戦略の一つだと考えます。
経営者の保障
法人保険の基本は経営者の保障です。
経営者は日々『売上』『人材』の事を考えビジネスの拡大を模索されていることと思います。
ただ、ふと「自分に何かあったときに会社は大丈夫だろうか」と心配になることもあるのではないでしょうか?
保険に入る、保障を得ることによって、万が一の時のリスクに備えることができます。
例えば・・・
経営者に万が一があると、どんなに統制がとれていた社内も混乱し、銀行や取引先などからの信用が落ち、融資や取引が停止するなど、経営の危機に直面します。
また、役員や社員への給与や賞与が十分に支払われない可能性も否定できません。
そんな時に、例えば死亡保険金として1,000万香港ドル(約1億5千万円)受け取ることができるとすれば、その保険金を使って十分に経営の立て直しをはかることが出来るのではないでしょうか?もちろん経営者のご遺族向けにしっかり手渡す方法も考慮しましょう。
退職金の準備
一概に法人保険と言っても、中には解約返戻金が貯まっていく商品もあります。
となると、将来解約をしてそのお金を退職金とすることも可能です。
香港でもご自身の退職金を準備する方法はたくさんありますが、その中で法人保険を活用すると『退職金を準備』しながら『万一時の保障』を受けることができます。
更には、会計士との協議が必要となりますが、保険料の一部を損金にし、退職金をより効率的に貯めるということも法人保険の魅力的ではないかと考えています。
法人税対策
会社が軌道に乗るまでは税金支払いどころでは無く、目先の資金繰りに追われている事が多いかと思います。
順調にビジネスが推移し利益が出ると法人税が掛かります。低税率の香港法人税ですが、現行税率は16.5%掛かることになります。
そこで法人税を確実に減らせるのが法人保険です。それは会社が保険料を支払っていき、その全部または一部を損金にすることができるからです。※会計士との協議が必要となります。
簡単に法人税の仕組みをお伝えすると法人税は法人の利益に課せられるわけではなく、正確には所得に課せられます。
所得=益金(課税対象となる会社の稼ぎ等)-損金
つまり、損金を作ればその分所得は減ります。その損金を作れるのが法人保険です。
法人保険の保険料を損金として計上し所得を減らすことができます。例えば極端な例だと益金が100万香港ドルあったとしても保険料を年払で100万香港ドル支払い、その保険料が全額損金になった場合、所得がなくなるので法人税が課税されなくなります。
ただし、法人保険は商品種別によって会計士から否認される可能性もあるので十分に事前準備が必要です。
緊急予備資金確保
会社を経営をしていると、何度も現金がなくて不安になった時期があったことでしょう。
今は順調でも、いつ天災や日本パッシングなどの不慮の事態が発生するか分かりません。
そんな時のために帳簿外に緊急予備資金を貯めておけるのが、他にはない法人保険の大きなメリットの一つです。
保険会社に保険料として支払っているお金なので保険会社に資金がプールしてある状態になります。
解約依頼後早ければ1週間ほどで手に入るお金なので実質的には資産ですが、貸借対照表には記載されません。つまり簿外資産を作ることが出来るということです。
効果的に簿外資産を作ることによって将来の資金需要に現金が用意できます。
例えば毎年の保険料は100万香港ドルとして、経費で処理されると帳簿(BS)上にも記載されません。契約から10年がたつと、保険料積立金が1,000万香港ドル貯まります。
この保険は契約から10年で100%が戻ってくる設計とした時、解約すれば解約返戻金は1,000万香港ドルになります。
帳簿(BS)上には出ていない1,000万香港ドルが解約益として現実化することになりますのでそのお金をいざという時のための緊急予備資金にできるのです。
※もちろん、解約金は益金となるので会社の収支状況によっては課税対象となります。
事業承継対策
企業も創業後時間が経過してくると、経営者として事業承継対策をどうしようかと考え始める人もいるのではないでしょうか?
事業承継対策の方法はたくさんありますが、その1つに生命保険の活用があります。
生命保険の効果はまず万が一があったときの死亡保障として活用します。また、お金が貯まる商品もあるので活用方法は多岐に渡ります。
ここ相続税率0%の香港で、事業承継を実行される人は多くないと思います。
以下、日本での一般論として対策が必要となるテーマをまとめてみました。
日本での事業承継時、保有資産割合として『不動産や自社株で7割』『金融資産2割』『現金1割』と現金化しにくい資産の割合が多いのが特徴です。
その時の問題点は承継させたい資産に対する相続税額が大きく算定され、現金や金融では相続税支払ができず、泣く泣く先祖伝来の土地や、工場などの不動産を手放さなければならない場合があります。
※不動産業者は足もと見た値段設定で売却を迫って来ることも多々あるようです。
また、相続税の納税資金を現金で確保できていれば、自社株は法定相続人に相続されますが、稀に自社株の評価が思いのほか大きく、納税資金を現金で準備できない事も現実発生します。
上記のような問題のある中で、相続税を支払う為の現金で準備できなかった場合、保有資産を売却するか、自社株を売却して現金化し納税をする必要が発生します。
売却しても問題ない有価証券や不動産だけの売却だけならいいのですが、自宅や自社株を第三者に売却し現金化することになると、結果、オーナー社長が作り上げた会社を手放すことにも繋がりかねません。
もし「会社を息子に継がそう」と思っていたとしても、自社株を売却してしまっては他人の会社になってしまいますからね…。
会社としての財務リスクも問題ですが、事業や資産を継ぐ人の目線を考慮することも、良い形での事業承継に繋がると考えています。その際、生命保険に加入しておくことで、まとまった現金を遺族へ遺し『ビジネス』『資産』共に次世代へつなぐことが可能となります。
③ 経営戦略上の保険
役員候補向け福利厚生対策
生命保険会社も福利厚生を目的とする商品を販売しています。
福利厚生で活用する場合は基本的に会社が保険料を負担しながら、
- →従業員の保障(団体医療・団体生命保険)
- →役員候補にしたい優秀なスタッフ向けに重大疾病保障(ガン・心筋梗塞、脳卒中など)
- →退職金を貯めていくことで、離職率の高い香港での優秀な人材をガッチリ引き止める
事ができる商品もあります、会社の利益が大きくなってきたら、是非考えていただきたいものです。
※香港では特に、健康保険などの制度が無いため、福利厚生を役職に応じてグレードを変えるなど人事評価の一環として考える企業もあります。
役員賠償責任保険(D&O)
コーポレート・ガバナンスの規制強化、香港という多民族の入り交じる国でのビジネスにおいて、損害賠償の訴えが会社だけでなく、会社役員個人、管理職にまで拡大し、その訴訟弁護団もより高度化・専門家が進んでいます。
会社役員は法的責任を負っており、その決定や行動は会社経営全体に影響を与えるほど重大な行動を占めています。
このため、会社役員の個人的なリスクを低減できる環境を整えておく事は、引いては、会社自身の経営を守ることに繋がります。
『会社内部からの賠償請求や争訟』
- →会社が会社役員個人を訴える。
- →会社の株主が会社役員個人を訴える。
- →従業員が会社役員個人を訴える。
『会社外部からの賠償請求や争訟』
- →監督官庁、政府機関、警察
- →顧客・取引先
さっきまで、仲良くビジネスをしていた仲間達が手のひらを返したように牙を向いてくる…それが訴訟です。
もちろん本保険が必要ではない環境が一番いい状態ですが、いざ賠償義務を負うと弁護士費用、和解金、賠償金が高額となるケースが多く、賠償で資金を失うと、ビジネスの再建・再構築・信頼の回復も困難となります。
そうならないように起こり得るリスクを一定の金額に経費化して、備えることもこれからの時代必要かもしれません。
賠償責任保険
事務所や工場の所有・使用・管理・運営によって第三者にケガをさせたり、財物を壊した場合に発生する法律上の賠償責任を負ったことによって被る損害をてん補します(保険料率は、所在地・業務内容等により異なります)。
例えば…
- →誤って窓から物を落としてしまい、通行中の人に当たってケガをさせてしまった。
- →来店中のお客様が通路に置いてあったディスプレイにつまずいてけがをしてしまった。
- →事務所内で起きた火災が隣りの会社まで延焼してしまった。
- →水漏れ事故が発生して、下の階の会社の在庫品に損害を与えてしまった。
上記のほか、訴訟費用・弁護士報酬・仲裁・和解・調停のための費用などをお支払いします。
→詳しいお問い合わせはこちら(弊社グループのNNI Insurance Broker)
http://www.nni.com.hk/火災保険
貴社オフィス・工場の資産について火災および落雷による物的損害を担保します。
消火作業による濡れ損や、他人の占有部分から出火して類焼した場合もてん補します。
また、割り増し保険料にて、補償の範囲 (台風、洪水、給排水設備による水害、爆発、等)を拡大する事も出来ます。
香港では、水による事故(建物は水まわりが悪いため)や盗難事故等が多く見受けられるため、補償を拡大するか、下記のオールリスク保険を手配するのが一般的です。
盗難保険
香港は、日本に比べ格段に盗難の頻度・件数の多い国です。事務所内に備える現金は、なるべく少額にとどめることが必要です。
また、現金・什器・備品・機械・資材・商品については、盗難保険の手配をお勧めいたします。
オールリスク保険
上記火災保険(拡張担保)に盗難保険・その他の危険をプラスし、ほとんどすべての偶然・外来の危険を担保するものです。
PL保険
海外PL保険は、貴社が製造または販売(輸出)した製品が原因となって発生した、他人の身体の障害(Bodily Injury)、または、その製品以外の他人の財物の損壊(Property Damage)について、保険期間中に貴社に対して損害賠償請求がなされた場合に、弊社が貴社のために応訴・示談交渉を行うとともに、損害賠償金および弁護士報酬・訴訟費用等の費用をお支払いする保険です。
取引信用保険
最近の不況で経営破たんする企業が急増するなかで、売掛債権の保全をする取引信用保険が注目を浴びています。
この保険は販売先の倒産などによる貸し倒れを補てんする新しい商品です。日本国内でも次第に普及している商品ですが、香港において販売先 与信管理の強化につながる取引信用保険のご手配をお勧めいたします。
従業員向け医療保険
現地従業員のための医療保険です。
この保険は販売先の倒産などによる貸し倒れを補てんする新しい商品です。日本国内でも次第に普及している商品ですが、香港において販売先 与信管理の強化につながる取引信用保険のご手配をお勧めいたします。
団体生命保険
日本では、多くの企業が採用している団体生命保険ですが、香港においても近年ニーズが高まっています。
従業員の方が亡くなられた場合、弔慰金や長期服務金などの支払いが発生します。 これらの急な出費を安価でカバーするためにこの保険を活用する企業が増えてきました。 一定の役職以上の社員のみ加入するなどの設定が可能です。
以上、全ての保険ではありませんがビジネスを取巻く上での最低限度の保険をご紹介致しました。
種類も多く、もし仮に自社内で負担している保険料だけに注目してみると『何でこんなに費用負担してるのか!?』と思われる法人様もあるとかと思います。
ですが、加入時には必要性を感じて選んでいるはずですので、その目的をしっかりと思い出してみて下さい。
もし客観的な分析が必要でしたら弊社のセカンドオンピニオンサービスを受診頂ければ、お役に立てることもあるかと思います。
弊社も、複数の保険会社取扱いをしておりますので、これまでの既存の保険会社との信頼関係に溝を作ることなく独立して対応させて頂きます。